こへ長小話

忍たま小話
子どもこへ長

・こへ長(小平太×長次)です。
・ちっちゃい子が描きたくてらくがきしたものへのかなり微妙な添え物です。
・思い出に浸る七松先輩と保護者っぽい長次さん。
・前半は下級生時代。後半は六年生っぽい予定です。
・以上の事がご理解頂けた方はお読み下さい。



「これは?」
「…それは、……と読む」
「ふぅん」
「長次は物知りだなあ」
「……本が、好きなだけだ」
「へえ」



 ――学園で出会って同じ組の同じ長屋の中で。
 何度も何度も寝しなに読み聞かせてくれた本。
 むかーしむかし、と始まるとワクワクしたものだ。
 長次が優しくて、ゆっくり喋る声がすぐに私に眠気を呼び込んで。
 それより何より長次の膝の上で同じものを読めるのが嬉しくて、楽しくて。
 話の内容なんかこれっぽっちも聞いていなかったけど。

 けれど、凄く嬉しくて楽しくて幸せだったのは覚えている。
 二人ともまだ小さくて、読めない字も沢山あって。
 一生懸命探しながら読んだ、のは、長次だけど。
 あの頃のままに私は成長して、長次には滑らかな頬に傷が二つ。
 凄く悔しくて納得できなかったのは、今となってはいい思い出だと思っている。だって、その傷が私の事を意識すると赤く浮き出るのを、最近の私は知っているから。
 
 だから、今もたまには、あの頃と同じように。

「長次! 今度はこの本を読もう!」
 無言で見返してくるお前が堪らない。
 あの頃よりもずっとずっと無口になったけど、私には聞こえるぞ。
 今だって溜め息を吐いて、自分で読め、とか何とか言っただろう。
 だけどな、長次。
 私は本の内容よりもお前の声が聞きたいんだ。
 だから、なあ。

「長次が読んでくれ!」
「私はここで聞くから」


 自分であの頃から勝手に自分専用の指定席に決めた彼の膝に乗ってにかっと笑えば。
 渋々と言う体で本を開いた長次に。
「長次! 大好きだ!」



 Over Voice

*** *** ***
こへ長1




「あの頃と一緒だな!」
「私は長次が本を読んでくれる声が好きなんだ。ナハハハハ!」
「……重い」
 あの頃から勉強なんて好きじゃなくて、体を動かす事ばっかり好きで。
 けれど長次が読んで聞かせてくれる昔の物語やお伽話、学年が上がってからは兵法書と、沢山の書物が楽しくて面白くて。
 それ以上にお前の声が、……心地よくて。
 読めない字があれば教えてくれて、いつだって根気よく私に付き合ってくれた。
 そんなお前の優しさが嬉しくて、すっと一緒にいようと決めたんだ。
 お陰で少しは頑張ったぞ。ろ組から落第したら一緒にいられなくなるからな。
 だから。――なあ、長次。
 もそもそと重いとか煩いとか詰りながらもその傷が赤く浮き出るのを私は知っているから。
 そんな顔を間近で見たいから。
 お前の傍にいる努力を怠らない私を、またその膝に乗せて声を聞かせてくれないか。

「長次! やっぱり私はお前(の声も優しいところも無口なところも不気味な笑顔も、全部全部)が大好きだ!」




 Voiceless Over

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