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発行日が古いものから並んでいます。
※最新刊が一番上にあります。
恋歌・一
恋歌・一
性懲りもなく学パロです。
伊達さんの姿にフォーリンラブ!なのに中々自覚できない鈍い真田さん。
挙句の果てにはヘタレMAX!
でも結局好き好き大好き!で直進致す予定です。
連作の予定なので、このお話は成人向けではありませんが、最終的には成人向けかな、と。
この後は以下続刊な感じです。
脇役としては前田の風来坊と真田軍の忍がちょろちょろと。
相変わらずオカン佐助に助けられています(筆者が)。
以下本文抜粋
ちょっと区切りが悪いのですがご容赦下さい。
恋歌・一
初めて伊達政宗と言う人に出会ったときの印象は、あ、眼帯してる、と思ったぐらいで、それ以外は特に印象というものもなく、同じクラスでもなかったから、その他特に意識した事はなかったのに。
――真田幸村はノートを片手にぼんやりと、そんな事を思っていた。
中高一貫の大規模な男子校であるこの学園で、幸村はずっと陸上部でやってきて、ここでの生活のリズムは部活三昧、授業は二の次、朝練したら早弁、早弁したら授業は子守唄、目が覚めたら学食、午後は昼寝、そしてまた部活なのだ。
そういうサイクルで生活してきて、同居人であり世話係でもある猿飛佐助には、旦那そろそろ年相応の生活態度ってもんがあると思うよ、と心配されるほど、自分はちょっと世間に疎いらしい、と高校一年に上がってから漸く意識し始めた。
それでもまだまだ部活が楽しくて、部活動のない日などは自主練などしているぐらいだった。
そんな幸村は、この学園で中等部から生活しているが、当然ながら、春には外部からの一般入試で高等部から入ってくる人もいるので、そこで、初めて、幸村は伊達政宗と言う人を見かけたのだ。
第一印象は、あ、眼帯、と思ってそれから黒髪だな、と思って、それから……記憶にない。
彼は特進クラスで、きっぱりと幸村と運命が分かれていた。
学園一の情報通である佐助曰くは次席入学らしく、首席は同じく特進クラスに在籍中の毛利元就と言うこれまた目元涼やかな人だと言う事だった。
俺とは随分違う世界の人だな、と思って、幸村は学食で日替わり定食と購買で買ってきた菓子パン二個を平らげ、屋上で昼寝すると言って席を立った。
屋上に行くと前田慶次と言う体格のよい派手な格好をした同級生が幸村を迎えてくれて、明日は新入生の部活見学の日だよ、と幸村に教えてくれた。
左様でござるか、と幸村は答えて、すでに自分は中等部時代からお世話になっているしな、と思って特に興味も涌かず、慶次殿は今年も助っ人稼業でござるか、と欠伸混じりに尋ねると、今年はそうだなぁ、高校生になったしみんなの恋愛相談にも乗りたいなぁ、とのんびり答えてきて、ああそういえばこの人はそういう類の話題が大好きでござったな、なんと破廉恥な、と思うも、すでに中等部時代からの付き合いなので今更かとも思い、黙って幸村は目を閉じた。
うららかな春の日差しが気持ちよくて朝から走り回って、腹もくちくなっていた幸村は、すぐに眠りの淵に引き込まれる。
慶次が何か言っているが、今年のさ、……むねって言う人が、……ごくて、しかも、……もよくて、と途切れ途切れにしか聞こえない。
ああもう眠いのに、と思うもこのお喋り好きの大男は、幸村が聞いていても聞いていなくても割合平気で喋るので、そのままにしておく。
あ、それでさ、幸村と同じ部活に入るかもよ、とそれだけがはっきり聞こえた。
陸上部に部員が増えるのはよいことでござる、と答えたような答えていないようなあやふやな記憶のまま、見事に五時間目を寝過ごし、部活で敬愛する顧問の武田信玄と言う教師に慢心するなと愛の拳を頂いたのだった。
その翌日にはすっかりけろりとして幸村は部活に出て、放課後になると新入生と思われる一団が、ぞろぞろと各種部活動を見学して回っていて、一部では体験入部とか言うものも行われているので、学校指定のジャージに着替えている人々がグランドをうろうろとして、各部活動ごとのジャージやユニホームではないので、大層目立っていた。
さしたる興味も涌かない幸村は、いつも通りに準備体操をしてウオーミングアップに何本か流して少し汗が出てきたところだった。
そこへ、顧問の武田先生がやってきて、新入生たちに何事か言い始め、各々見学していたもの達がジャージを脱ぎ始めた。
それぞれが屈伸したり上体を伸ばしたりと、思い思いの準備運動をしていたかと思うと、おもむろに短距離用のコースに数人ずつ並び始めた。
おおこれは、と思って幸村も中等部からの仲間や冷やかし半分で見ている緒先輩方とコースを避けて見学に回る。
なるほど、陸上部に見学に来るだけあって、それぞれそれなりに経験者と見えてなかなかの走りを見せるものもいたが、中には走者ではなく、投擲や跳躍系統のものもいたりで、それでは彼らに不利だなぁ、などと幸村は見ていた。
幸村は短距離走者であって、長くても四〇〇mまでしか走らないし、走れない。
長距離もそれなりの成績を出せるが、やはり競技としてやっていくならどちらかしか選べないし、それなら自分の性格的にもスパッと気持ちよく風を切れる短距離を、と単純な理由で選んだのだが、やってみればやってみるほど面白く、敬愛する師匠から指導を受け、フォームの改造や姿勢の矯正を施し、ぐんぐんとタイムも縮み、今となっては陸上部のエースと言われるほどに成長したので、走るのが単純に楽しくて面白かった幸村は、思わぬ扱いを受けて恐縮してはいるが、基本的には自分が楽しくて走っている。
ああ、あの人はかなり早いのだろうな、あの人はハードル走者なのかもな、とか、つらつらと思いながら見ていたが、今年の収穫は一般的かも、と思い始めていたとき、どよ、と部員がどよめいた。
ピッと小気味よい笛の音と共に数名ずつ走っていたのだが、いつの間にか最後の組になっていて、走っているものを見ていると自分が走りたくなってしまう幸村は、途中でその場ランニングなどし始めて集中して見ていなかったのだ。
そして、どよどよとどよめきが聞こえて、何事かと思ってスタートラインを見ると、片目に眼帯をはめた人が立っており、あれ伊達だろ、と先輩たちがひそひそとしているのが耳に入る。
あ、眼帯の人、と思っているうちにピッと笛が鳴り、一斉にスタートしてしまう。
そして、見たのだ。
風を切る人を。
自分以外に風を切る人を。
実際に人が風を切っているところを見たのは、初めてだった――。
幸村があれだけ必死に練習して手に入れたフォームを、いや、それ以上に美しいフォームで見事に一〇〇mを走りきり、一緒にスタートした他の人々を置き去りに悠々とゴールした彼は、涼しげに振り向くと、さっとジャージを拾い上げ、走り終わった人々が集まっていた場所に紛れ込んでしまった。
もっと、もっと、よく見たい。
あの人と走ってみたい。
あの人のタイムはどれぐらいだったのだろう。
自分とどのぐらいの差があるのか。
首を伸ばして彼を探してみるが、特に体格がよいと言う訳でもなさそうな彼はその集団に紛れ込んでしまって、見つからなかった。
眼帯の人、と、それしか印象になかった幸村は、途端に彼が気になり始める。
あの人のあの美しいフォームは、今までのどんな競技大会でも見たことがなかったし、あれほどの実力がありながら、彼の名前を聞いたこともなかったのだ。
伊達だろ、と囁きあっていた先輩に聞いてみるも、それはこの学園に次席入学して、しかも目立つあの眼帯のせいで、伊達、と言う名前が先行しての事だったらしく、あれほどの走者だったとは、と同じように驚いていたのだ。
ざわめく陸上部員たちを尻目に、部活見学に来ていた者たちは、あざーっすと運動部特有の挨拶をすると引き揚げていってしまった。
幸村はあ、あの人は、と思って再びその集団に目を凝らしたが、どうやら先ほどの走りで見学組の人々の関心を集めてしまったようで、その集団の輪の中心に彼はいて、とてもじゃないが声をかけたり出来るような状態ではなく、ぽつぽつと通常の練習に戻っていく部員たちに流されて幸村もダッシュ一〇〇本とか言う地獄のような練習に入っていった。
+++ +++ +++
――あんなに美しい人を俺は初めて見た。
強烈にその印象を残して、彼は幸村の前から姿を消したのだった。
それ以来幸村の脳裏から彼が消える事はなく、伊達政宗、伊達政宗、とまるで呪いの呪文のように脳内で口ずさんでは、五クラスも離れている特進クラスの前をうろうろしてみたりしたが、授業の時間割があまりにも違いすぎて廊下からちょこっと彼の顔を眺めては、すごすごと自分のクラスに舞い戻る、と言うような日々を過ごしていた。
俺はこんな事をする男だったか。
こんなに気の弱い事をする男だったか。
と自分自身の行動に疑問を抱くものの、彼のクラスを覗く事はやめられず、時間が出来れば特進クラスの前に出没するようになったのだ。
あの日、部活見学の日に強烈に印象付けられてから、暫く経つが、彼は入部に来なかった。
だから、何としても彼を陸上部に誘いたかったし、もう一度彼の走る姿を見たかったし、自分と勝負して欲しかった。
そんな幸村の変化にいち早く気付いたのは、世話係の佐助とお祭り男の慶次だった。
いつも通り昼休みに屋上で屯していると、最近旦那おかしくない? と佐助がパックジュース片手に聞いてくる。
そうか? と答えてみるものの、うんうん、最近幸村おかしいよね、と佐助に同意する意見が慶次の口からも飛び出して、多数決で幸村がおかしい、と言う結論に達する。
どうやら自分の負けらしいと悟った幸村は、二人からのねぇねぇ、何があったのさ、何でも言いなよ、力になるよ、俺と幸村の仲だろう、それを言うなら俺様の方が旦那と付き合い長いんだし、と揉みくちゃにされて、離して下さらんか慶次殿、佐助もやめてくれ、と二人を制し、おかしい、と言われてすぐに思い当たるのは、当然ここ最近己の脳内を占領している彼の事で、それしか思い浮かばなかった幸村は、その事を話し始めた。
「先日の部活見学の日にな」
と口を開き、どういう出来事があったかを、幸村は興奮気味に語り始める。
うんうん、へぇ、なるほど、それは凄いね、などと口にしながら佐助と慶次は幸村の話を聞いて、相槌を打っている。
「でな、それなのに陸上部に入部しないどころか、多分、どこにも所属しておらぬし、あれ以来顔も見れていない」
「その、だから、ぜひ我が部へ、来て欲しいのだ。あの美しい姿がもう一度見たい!」
両拳を握り締めて興奮気味に語り尽くし、うおおおとでも言い出しそうな幸村を慌てて佐助と慶次は押し止め、旦那それって一目惚れ? と佐助はニヤニヤし、慶次に至っては恋愛相談ならいつでも乗るよ、とにこりと微笑んでくる。
「は、なぜ、そうなる……」
幸村は見当違いも甚だしい二人に破廉恥でござると叫んでみたものの、二人同時に、真っ赤になっちゃって、美しい美しいって褒めちぎってる方が破廉恥じゃん、と笑われてしまう。
そうして三人でワイワイと騒いでいると、給水タンクを挟んだ裏側からShit! と小さく舌打ちが聞こえてきて、アンタら煩ェ、と低く掠れたような声がする。
え、何事、誰かいるの、と幸村と佐助と慶次は顔を見合わせぴたりと黙ると、様子を伺う。
確かに昼休みの屋上なので他に人がいてもおかしくはないが、ここは比較的人が少ない、この広い校舎の数ある屋上の中でも穴場なのだ。
反対側の棟の屋上などは日当たりもよすぎるほどよくて、生徒たちの人気スポットで、現在幸村たちがいる方の屋上は大抵いつも三人で貸切のようにして使っていたのだ。
それなのに、こんな辺鄙な屋上で、人の声がするなんて、と自分たちの事は棚に上げて驚いて三人は固まったままでいた。
アンタら賑やかだな、と今度は少し笑いさえ含んだような声がしたかと思うと、声の主は姿を現して、座ったまま寄り添うように固まっている三人を見下ろした。
あ、上履き同じ色、一年だ、と幸村と佐助と慶次が内心ほっとして顔を上げると、頭上には一つ目を眇めたあの人がいたのだ。
「あ、だてまさむね……」
幸村がそう口にした途端ばっと佐助と慶次に口を塞がれ、むぐむぐと抗議を上げる。
「あ、いやその、ごめんね、呼び捨てとか」
「うんうん、悪気はないんだ。この子いつもちょっとずれてて」
二人揃ってあはは、と意味不明な作り笑いを浮かべ、だてまさむね、と幸村が言った人物に謝る。
だてまさむね、と言われた彼はha! と鼻で笑うような声を出すと、さっきから伊達政宗、伊達政宗って何度も言われてたしな、そんなに俺の事が気になるか、と腕組みした格好がなんとも堂に入っていて、三人は再びぽかん、と見上げた。
「All right.悪気がねェのは聞いてりゃ分かったよ」
口調の割には物分りのよさそうな答えを返してくれる伊達政宗に幸村以外の二人は、ほっと胸を撫で下ろした。
むぐむぐと抗議していた幸村だったが、ええい、離せと二人がかりの制止を何とか振りほどき、あの、その、と目をキラキラさせて伊達政宗に近付く。
あの子怖いものないのかな、と佐助と慶次は同時に思ったが、それはお互いの胸の内で呟かれただけだった。
「アンタ何モンだ、俺の事やたらとあの二人に喋ってただろう」
鷹揚に顎をしゃくってあの二人、と一纏めにした慶次と佐助を指すと、伊達政宗は幸村に声をかけた。
実際に間近に伊達政宗を見た幸村は、興奮と何やら得体の知れない感動に包み込まれてろくに返事も出来ず、あの、その、えっと、おれ、それがしは、と意味の成さない言葉をぶつぶつと漏らし、ha? と政宗に首を傾げられ、かあ、と頬に血が上り、さらに声さえ震え始める始末で、そんな様子を見ていた慶次があ、俺前田慶次、よろしく~と、へらりと笑い、俺様猿飛佐助、そこの変な子のお世話係やってマース、とふざけた挨拶をしたところで、幸村はハッと我に返り、何故あの二人に先を越された、と自分を叱咤激励してやっと名を名乗ったのだ。
「某は真田幸村、陸上部在籍の一年でござる」
いつもならがなりたてるように大きな声で話す幸村だったが、その声は風に乗って消え失せてしまうほど小さくて、政宗はもう一度ha? と聞き返してしまった。
聞き返された幸村は開き直ったように真っ赤な顔を上げると、今度こそ持ち前の大声で名前を言ったのだ。
「真田幸村と申す!」
うっせェ! と耳を塞いだ政宗は持っていた文庫本で幸村の額を思わず叩いてしまい、Sorry.と小さく謝ったが、幸村は気にした風でもなく、いえ、よく声が大きいと言われますので、と叩かれた額を手で撫でた。
それと同時に昼休み終了のチャイムが鳴り響き、Oh,ろくに本も読めなかったぜ、とひとりごちた政宗は、じゃあな、前田に猿飛に、……真田幸村、と片手を上げて背中を見せてしまった。
「俺の事はアンタらの方がよく知ってるだろ?」
文庫本で三人を指すと一つしかないとは思えないほどに煌く目を一度だけ向けて、今度こそ去っていってしまった。
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