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Matter of taste I love! So I propose to you!

Matter of taste I love! So I propose to you!
プロポーズ
歳の差逆転話。
年上真田さんと年下伊達さんの相変わらず甘々砂吐き話です。
社会人真田さんにボンクラ小僧伊達さんが恋しちゃう。
でもそこはウチの真田さんなので、うっかりちゃっかりしっかり伊達さんに心奪われちゃってます。
長々と両片思いのあとは、そりゃお決まりの破廉恥コースでございます。
相変わらず佐助さんナイスアシスト!
片倉さんマジ保護者。
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Matter of taste I love!
       So I propose to you!



 この仕事も随分長く続いた。
 いや、世間一般で言えばまだその程度かという様な期間だが、我侭放題喧嘩上等、挙句の果てに実は働かなくても生きていけるという生家の事情のせいで、一切まともに働いたことなどなかった彼にしてみれば、この店に勤め始めて一年と言う期間はそれはもう大変な長期勤務になるのだ。
 ――ぼんやりと店内を眺めている彼には。
 彼―伊達政宗という随分立派な名前の割に―は、そのような事情があってすっかりボンクラ小僧に成り果てていた。
 家に帰れば小言の煩い守役がいて、毎度毎度同じ台詞を述べるのだ。
「政宗様ももう高校をお出になられたのだからせめて少しは世間並みに働かれてはいかがか」
 などと。
 俺には関係ねえだろとこちらも毎回鼻を鳴らして一蹴していたのだが、とうとう捕まったのだ。
 そもそも働いて金銭を得る必要がないのは小言の主も重々承知ではあったが、所謂『一般的な常識を持たせるため』の『社会見学』のようなものをさせたかったらしい。
 何せ生まれは良家の嫡男だし、無駄に勉強だって運動だって出来る上に、程よく腕っ節もあるときて、一目置かれているとの勘違いが更に彼―政宗―の山より高いプライドを増長させるに至り、Coolが売りのちょっと変わった若者になってしまったのだから。
 殊更守役の気にするところと言えば、苦労知らずゆえの、実際には世間知らずの勘違い坊っちゃんだと言う事に尽きる。
 その辺りを滾々と言って聞かされ諭すようにされて、自分の知り合いの店が今人を募集しているので、そこなら気兼ねなくお勤めできるだろうと、眉間の皺が普段より二割増しになった彼にきつ目のお灸を据えられて、渋々と言う体で政宗は今、この店に務めている。
 何度も同じ話を繰り返し幾度か彼―守役の小十郎―の伝手で飲食店だのアパレルだのと点々としては、短期間でバックレて、小十郎の顔を潰してきたのだ。
 一番マシだったのは本屋のバイトで、一ヶ月。
 アレは割りと面白かったと振り返る政宗は、でもここはもっと続いたもんな、と自画自賛した。
 紹介時に大変嫌そうにしていた小十郎は、ここは本当はお薦めしたくなかったが、と幾度か前置いて店主だというどうも惚けた風情のある男に引き合わせたのだ。
 それでもここならば、政宗の気紛れにも我侭にもある程度対応しきれると小十郎のお墨付きで。なるほど勤めてみれば中々店主である飄々とした男は政宗に物怖じせず、時にはお前は俺のカーチャンかと思うような説教まで垂れてくる始末で、政宗に小十郎以外に第二の天敵が現れた瞬間だったのだ。
 そしてそれはまんまとハマり、政宗は日々文句を垂れながらも、この店に通勤していた。
 今日もそんな一日の一コマを過ごしている政宗は、ぼんやりと然程混んでもいない店内を見ていた。
「なァ、佐助」
「なあに、まーくん」
 それやめろつってんだろ! Shut Up! と続いてあーそうね、と軽く受け流したのが店主である佐助だった。
「じゃあさ、まーくんも一応雇い主の俺様を呼び捨てるのはやめようよ」
 ね、と何を考えているのか分かり難い笑顔で返され、うるせぇ俺はいいんだと返せば、それ一般社会じゃ通じませんよとカーチャンモードで返されて、政宗はやれやれと肩を竦めた。
「うるせーなお前は俺のカーチャンか!」
 毎回恒例となってしまった店内のやりとりに、まばらに座る客からまたやってるよと言うような視線が二人に注がれる。常連の客なぞはクスクスと笑う者までいる始末だ。
「ほらほらまーくん、あの方にお水お代わり入れてきてあげて」
 ったく下らねえ事で笑われちまったじゃねえかと、口の割に繊細そうな肌を淡桃に染めて、政宗は渋々と水の入ったポットを片手にお代わりいかがですかと笑いもせず客の間を歩く。
 然程混んでいないとは言ったが、店主である佐助こだわりのコーヒーに手製のフード類が人気の所謂ちょっとしたオシャレカフェだったりするので、昼時などはこんな軽口などしていられない程混み合うのだ。
 その時間帯が過ぎての所謂アイドルタイム。
 文庫本片手に窓際に陣取るサラリーマンや、ちょっと普段は何をしているのか分からない風体の人、午後のひと時を楽しみに来ている老夫婦など。
 そんな人々が今この店にはいた。
 ひと通り店内を巡って待機ポジションであるカウンターに戻ってきた政宗に、佐助はおかえりと笑いかけ、ランチ何か食べたいものある? と尋ねた。
 うーんと一瞬悩む素振りをした政宗だが、今日のランチでまだ残ってるのでいいと、案外殊勝な答えをする。
「えーいいの?」
 佐助がいつも思うことをそのままを返す。
「まーくんって食べるの興味ないよね」
 ここに勤め始めてから政宗はまかないに希望を出したことがない。好きなもの食べていいよと言っているにも関わらず、食べ物に対しては無頓着だったりするのだ。
「いや、アンタの飯中々だし。参考になる」
 普段ぶっきらぼうな口調だったり態度だったりする政宗が、実は料理が好きだと佐助が知ったのは彼が勤め始めて半年が過ぎた頃だった。
 たまたま手が足りなくて、政宗にもキッチンに入ってもらったところ、余りの手際の良さに佐助が驚いたのが切っ掛けだった。
「ちょ、まーくん料理できるなら言ってよ~」
 そこからはオムレツには生クリーム入れるだろ、とか、ビーフシチューには実は隠し味で醤油を少々などと、以外な共通点で盛り上がったのは、記憶にも新しい。
「作るのは好きなのにね~」
 佐助は笑いながらランチ何残ってたかな~とキッチンを物色し始める。
 そうしながら、ふと思い出したように政宗に声をかけた。
「そう言えばさっき何言おうとしてたの」
 冷蔵庫に顔を突っ込みながら佐助が政宗に問えば、ah-, と政宗から相槌があって、いや、アイツ、来ねえなって思って、と些か歯切れの悪そうな物言いで返事があった。
「あー、旦那?」
 すぐに何のことか察しがついた佐助が返せば、まァ、と短い返答があって。
「忙しいんじゃないの~」
 あったあったとストックしていたハンバーグを見つけた佐助がフライパン片手にのんびり答えれば、そうかと一言政宗が答える。
「まあ、あの人も一応社会人だしねー」
 そうだな、と返した政宗は伝票を持った客に気付き会計に向かった。
 ありがとうございましたと見送って、そのままガラスのドアを見つめる。


 政宗が勤め始めた初日に知り合ったのは、佐助の幼馴染だという一風変わった男だった。
 政宗とて他人の事を変わり者だとは言えない立場だが、それにしても変わっていると思ったのだ。
 ピーク時を外してやってきた男は、他に空いている席には目もくれず大股でカウンターまでやってくると、佐助え! と声を張り上げた。
 それ程広い店でもないのに、そんな大声で、とこいつ馬鹿なのかな、変な奴だったらぶちのめすかなどとこちらも変な奴感満載の思考でいれば、佐助がちょっと旦那毎回毎回大声でやめてって言ってるでしょと、至って普通に対応しているのを目の当たりにして政宗はこいつ何者だよと思ったのだった。
 余りの勢いにいらっしゃいませとも言えずに立ち竦んでいた政宗だったが、どうやら知り合いらしいと見当をつけて、殊更慇懃にいらっしゃいませと水とおしぼりを置いてやれば、忝のうござると返されて、ha? と返す前に吹き出してしまったのだ。
 それから真っ赤になった彼が、佐助! と助けを求めるような素振りで呼び、注文すら聞いていないのにランチを持ってきた佐助が、あー、この子今日から入ってもらったんだ~と真っ赤になって湯気でも出そうな男の前にプレートを置き、よろしくね、と片目を瞑って見せた。
 それを聞いて納得したのか、彼が左様かとこれまた政宗の収まりかけた吹き出しを繰り返させ、某は真田幸村と申しますと開き直った彼に自己紹介され、政宗も笑いの合間によろしくと返したのだった。
 それ以来彼はどうやらランチはここと決めているようで、毎日顔を合わせるし、夜なども閉店間際にやってきては残り物でいいから食わせてくれと、幼馴染の店と言うのを遺憾なく堪能しているのだ。
 そんな日々の中で数ヶ月前、佐助がたまたま席を外している時に彼が来て、今いねえしと答えた政宗に、腹が減って死にそうでござると政宗が初日に吹き出した喋り方で捨てられた子犬みたいな目でカウンターの突っ伏した顔が見上げてきたのだ。
 それで、しょうがねえなァ、とぼやきつつも残り物の食材で作った適当な飯にいたく感激されたのが、政宗のボンクラ人生で見たこともないような笑顔で。
「アンタ普段何食ってんだ」
 と言えば、はあ、大体ここで食っておりますゆえ、と些か気恥ずかしげに答えてきたのが、また、――。

 その時以来幸村が訪れれば何かと話をするようになり、今では入店第一声が佐助え! だったのが、やたら嬉しそうに政宗殿! と言われる有り様で。
 それが嫌ではない自分がいるのがまた政宗を驚かせているのだが。
 佐助曰くよっぽどまーくんのご飯気に入ったんだね~、らしいが、彼は何を作っても美味い美味いと平らげるので、別に誰でもいいんじゃねえのと返せば、いや、某は政宗殿の飯が一番美味いと! と勢い込んで答えられ、佐助にはやっぱりね、などとからかわれたのだ。
 それ以来佐助は真田の旦那のご飯はまーくん担当ね、と俺様にも休憩時間がやっとできるよーと言って何をしているのか、そそくさと消える事が増えたのだけれど。
 そのうちに、今まで料理などしても振る舞う相手と言えば家族だし、小十郎だし、それはそれでやり甲斐もあったけれど、こうして外で振る舞うのは政宗のボンクラ人生の中に一つの光となった。
 作り甲斐だとかやり甲斐だとか。振る舞って喜んで貰えると言う事に、気恥ずかしいような、けれど嬉しいような。そんな喜びを見出していったのだ。
 だから、こんなに長く(とは言え一年程だが)一つの職場に居続けられたのかもしれないと、思う程度には。

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